医薬品医療機器等法
医薬品医療機器等法とは、日頃我々が接している薬に関する法律です。昭和35年に初めて制定され、その後、現状に合うようにたくさんの改正を重ねてきております。医薬品等に関する製造、販売、使用、その他全般について広く規定しています。医薬品医療機器等法違反に対する罰則や立入調査あるいは医薬品使用後の副作用報告についても規定されています。われわれ動物用医薬品関係者、すなわち、製造販売業者、製造業者、販売業者、獣医師、水産指導者、飼育者そして医薬品等の使用者が、製造し、販売し、使用等を行う際に重要となる法律で、人用医薬品も動物用医薬品も同じ医薬品医療機器等法の適用を受けます。
(動物用医薬品は、厚生労働省ではなく農林水産省が所管)。動物用医薬品に関しては第83条で読み替えが規定されています。また、動物用医薬品のみに適用される条文がいくつかあります。
医薬品医療機器等法は、以下のように構成されています。
- 第1章 総則
- (第1条~第2条)
医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器及び再生医療等製品、その他の各定義を定める - 第2章 地方薬事審議会
- (第3条)
地方薬事審議会の役割を定める - 第3章 薬局
- (第4条~第11条)
開設の許可、許可の基準、開設者としての遵守事項、情報提供などを定める - 第4章 医薬品、医薬部外品及び化粧品の製造販売業及び製造業
- (第12条-第23条)
医薬品、医薬部外品及び化粧品の製造販売業、製造業の許可及び許可の基準、機構による調査、審査、外国製造業者の認定、製造販売の承認、再審査、再評価などについて定める - 第5章 医療機器及び体外診断用医薬品の製造販売業及び製造業等
- (第23条の2~第23条の19)
医療機器及び体外診断用医薬品の製造販売業の許可又は製造業の登録制度、製造販売の承認・届出制度、登録認証機関、指定高度管理医療機器等の製造販売の認証、基準適合証の交付、使用成績評価などについて定める - 第6章 再生医療等製品の製造販売業及び製造業
- (第23条の20~第23条の42)
製造販売業及び製造業の許可、製造販売の承認、再審査、再評価などについて定める - 第7章 医薬品、医療機器及び再生医療等製品の販売業等
- (第24条~第40条)
医薬品の販売業、医療機器の販売業、貸与業及び修理業及び再生医療等製品の販売業の許可、登録、情報提供などについて定める - 第8章 医薬品等の基準及び検定
- (第41条~第43条)
日本薬局方等の基準、検定などの設定について定める - 第9章 医薬品等の取扱い
- (第44条~第65条)
毒薬及び劇薬、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器及び再生医療等製品の取扱いについて定める - 第10章 医薬品等の広告
- (第66条~第68条)
医薬品等の誇大広告、広告制限、禁止などについて定める - 第11章 医薬品等の安全対策
- (第68条の2~第68条の15)
医薬品等の情報の提供、適正使用の普及啓発、副作用報告などについて定める - 第12章 生物由来製品の特例
- (第68条の16~第68条の25)
生物由来製品の製造管理、容器、添付文書記載特例などについて定める - 第13章 監督
- (第69条~第76条の3)
立入検査、緊急命令、廃棄等検査・改善命令、許可の取消しなどについて定める - 第14章 指定薬物の取扱い
- (第76条の4~第77条)
指定薬物の製造等の禁止、広告制限、廃棄などについて定める - 第15章 希少疾病用医薬品、希少疾病用医療機器及び希少疾病用再生医療等製品の指定等
- (第77条の2-第77条の7)
希少疾病用医薬品、希少疾病用医療機器及び再生医療等製品の指定などについて定める - 第16章 雑則
- (第78条~第83条の5)
手数料、適用除外等、治験の取扱い、動物用医薬品等に関する規定・特例などについて定める - 第17章 罰則
- (第83条の6~第91条)
各関連罰則規定を定める
製造(GMP)
1937 年にアメリカでスルファニルアミドをジエチレングリコールに溶解した液剤が原因で100 人以上の人が死亡する事故が引き金となって、医薬品が有効であるとともに安全である事を保証する為にGMP(Good Manufacturing Practice:医薬品等の製造管理及び品質管理に関する基準)は生まれました。WHO(世界保健機関)が加盟国に広め、日本でも法令として定められています。
医薬品等は多くの段階を経て製造されますが、定められた成分が定められた通りに含まれ、製品の品質が保証されている事が必要です。
その為に、GMP では製造工程の条件や手順、使用する原料等のソフト面についてだけでなく、使用する設備や装置、製造する環境、工程や試験で用いる計器といったハード面を含めた製造に係る全てについて製造管理及び品質管理が行われるよう定められています。
- 1. ハード面
- 動物用医薬品又は動物用再生医療等製品の製造所の建物、構造設備、製造機器、保管設備、試験機器等が適切である事が、動物用医薬品については医薬品医療機器等法第13条第4項第1号 (同法第13条の3第3項 において準用する場合を含む。)、動物用再生医療等製品については同法第23条の22第5号(同法第23条の24第3項)の規定に基づき、「動物用医薬品製造所等構造設備規則(平成17年3月29日農林水産省令第35 号)」が定められています。
- 2. ソフト面
- 動物用医薬品等の製造所において必要な製造管理及び品質管理の方法に関して、動物用医薬品については医薬品医療機器等法第14条第2項第4号の規定に基づき「動物用医薬品の製造管理及び品質に関する省令(平成6年3月29日農林水産省令第18号)」、動物用医療機器又は体外診断用医薬品については同法第23条の2の5第2項4号の規定に基づき「動物用医療機器及び動物用体外診断用医薬品の製造管理及び品質管理に関する省令(平成7年6月29日農林水産省令第40号)」、動物用再生医療等製品については同法第23条の25第2項の規定に基づき「動物用再生医療等製品の製造管理及び品質管理に関する省令(平成26年11月18日農林水産省令第62号)」が定められており、原料の受入から最終製品が出荷されるまでの全製造工程の作業が適切に行われるよう標準化されています。
製造販売(GVP・GQP)
動物用医薬品、動物用医薬部外品、動物用医療機器及び動物用再生医療等製品(以下、「動物用医薬品等」とします)の製造販売業者は、動物用医薬品等を製品として製造販売する為に、製品毎に農林水産省から製造販売承認を取得しなければなりません。ここで言う製造販売業とは、「その製造等(他に委託して製造をする場合を含み、他から委託を受けて製造する場合を含まない。以下同じ)をし、又は輸入をした医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品を、それぞれ販売し、貸与し、又は授与する事」と医薬品医療機器等法で定義されています。その為製造販売業者は、当該製品の製造販売後の品質や有効性および安全性についての責任を持ち、医薬品等を社会に供給する立場としての責任を負う事になります。
販売業の許可を受ける為には、次の2つの許可基準を満たす事が要件となっています。すなわち、①動物用医薬品等の品質管理の方法が、農林水産省令で定める基準に適合している事、②動物用医薬品等の製造販売後の安全管理の方法が、農林水産省令で定める基準に適合している事、の2つです。
この品質管理の基準は、英語のGood Quality Practiceの頭文字を取ってGQPと呼ばれています。また、製造販売後の安全管理の方法に関する基準は、英語のGood Vigilance Practice からGVP と呼ばれています。
これらGQP およびGVP の徹底を期する為、動物用医薬品等の製造販売業者は『総括製造販売責任者』として薬剤師(医療機器及び再生医療等製品については基準に該当する者)を設置し、品質管理に関する業務の責任者(「品質保証責任者」)および製造販売後安全管理に関する業務の責任者(「安全管理責任者」)との相互の密接な連携を図る事を定めています。
- 1 動物用医薬品GQP: 「動物用医薬品、動物用医薬部外品及び動物用再生医療等製品の品質管理の方法に関する基準(平成17年3月9日農林水産省令第20号)」
- 製造業者(委託先製造業者又は自社製造所)が、適正な製造管理、品質管理の下に、動物用医薬品等の製造を行う事を、製造販売業者が管理する事を定めた基準です。
また、製品の出荷後に品質上の問題が発生した場合の措置や対策のあり方についても定めています。出荷後に品質上の問題が発生し、それが製造委託先の品質管理が原因であったとしても、その責任は製造販売業者が負わなければなりません。場合によっては、製品回収を実施する事もあります。
なお、動物用医療機器及び動物用体外診断用医薬品については、「動物用医療機器及び動物用体外診断用医薬品の製造管理及び品質管理に係る業務を行う体制を定める省令(平成26年11月18日農林水産省令第59号)」により製造販売業者の管理基準が定められています。 - 2 動物用医薬品GVP:動物用医薬品、動物用医薬部外品、動物用医療機器及び動物用再生医療等製品の製造販売後安全管理の方法に関する基準(平成17年3月9日農林水産省令第19号)
- 動物用医薬品等の製造販売後の安全管理体制の整備、安全管理の為の基準の作成、安全管理情報の収集、安全対策の実施等について定めています。
販売
- 1.動物用医薬品
動物用医薬品を販売するには各都道府県知事から販売業の許可を受ける必要があります。また、6年毎に許可の更新を受けなければ、その期間の経過によって、その効力を失います。
販売業の許可は、販売形態や販売先並びに取扱品目によって下表の通り4 種類に分かれ、薬剤師または登録販売者を置く事が必要です。登録販売者とは、医薬品の販売等に従事する為に必要な資質を有する者として都道府県知事の登録を受けた者の事で、動物用の登録は人体用とは別に受ける必要があります。
動物用医薬品を販売あるいは授与する場合には、薬剤師または登録販売者は動物用医薬品の適正使用の為に情報提供に努める事や、購入者等から相談があった場合の応需が義務付けられています。販売業の種類 配置される専門家 販売可能な動物用医薬品 店舗販売業 薬剤師
または登録販売者薬剤師は全ての医薬品
登録販売者は指定医薬品*以外の医薬品特例店舗販売業 医薬品医療機器等法上の定めなし 店舗毎に都道府県知事が許可した医薬品 卸売販売業 薬剤師
または登録販売者薬剤師は全ての医薬品
登録販売者は指定医薬品以外の医薬品配置販売業 区域管理者として薬剤師
または登録販売者防虫剤等の農林水産大臣が定める基準に適合する医薬品
薬剤師はすべての医薬品
登録販売者は指定医薬品以外の医薬品*動物用医薬品のうち薬理作用が非常に激しく使用方法の難しいもの等、取り扱われ方により動物に危害を与える恐れがあるもので、薬事法の規程に基づき農林水産大臣が指定する医薬品
- 2.医療機器
動物用医療機器は、高度管理医療機器、管理医療機器及び一般医療機器の3つに分類されます(動物用医薬品等の使用「医療機器」の項参照)。
動物用高度管理医療機器及び特定保守管理医療機器(農林水産大臣が指定したもの)を販売・貸与するには都道府県知事の販売業又は貸与業の許可を受ける必要があります。動物用医薬品の販売業と同様、6年毎の更新制です。
動物用高度管理医療機器を販売・貸与するには都道府県知事への届出が義務付けられています。動物用一般医療機器を販売・貸与するには、許可又は届出の必要はありません。- 3.再生医療等製品
再生医療等製品を販売するには、都道府県知事の許可を受ける必要があります。この許可は6年毎の更新制です。再生医療等製品の販売先は、その取扱い業者又は医療機関等のみであり、一般の生活者に販売することは認められていません。また、販売業者は、「再生医療等製品営業所管理者」の設置が義務付けられています。