残留
食品の安全性を確保する為、食品中に残留する可能性のある農薬、動物用医薬品及び飼料添加物は、「ポジティブリスト制度」によって規制されています。「ポジティブリスト制度」は、食品衛生法に基づき、食品中の残留基準が設定されていない農薬、動物用医薬品及び飼料添加物が残留する食品の流通を原則的に禁止する制度です(2006年5月29日施行)。
ポジティブリスト制度設定以前は、残留基準が設定されていない動物用医薬品等が食品から検出された場合、その食品の販売等を規制できませんでした。しかし、ポジティブリスト制度では、原則として、全ての動物用医薬品等について残留基準を設定し、基準を超えて食品中に残留する場合、その食品の流通を禁止する事ができます。また、基準が設定されていないものが一定の量(この量を一律基準値と言います。)を超えて食品中に残留している事が明らかになった場合についてもその食品の流通を禁止する事ができます。
国内では、「医薬品医療機器等法」、「飼料安全法」、「動物用医薬品の使用の規制に関する省令」等の動物用医薬品等の残留を防止する法令があり、動物用医薬品承認時の残留規制措置や飼料の安全確保や使用基準又は休薬期間が設定されています。これらを遵守して適正な使用を行えば有害物質等の残留問題は起きない仕組みになっています。
<参照>
・ 農林水産省ホームページ
・ 厚生労働省ホームページ
耐性菌
抗菌性薬剤は細菌感染症の治療になくてはならない薬ですが、その使用に当たっては耐性菌の出現という問題が常についてまわります。
耐性菌とは、病原菌が自ら抗菌性薬剤を分解する酵素を作り出したり、体の構造を変化させて抗菌性薬剤の作用部位への結合を防いだり、細胞内へ入ってしまった抗菌性薬剤を細胞外へ汲み出す仕組みを作ったりして、それまで効果のあった抗菌性薬剤に対して抵抗性を持った病原菌の事です。一旦耐性化した耐性菌の性質は次の世代へと遺伝するのはもちろんの事、種の違う細菌が耐性菌の遺伝子を取り込んで耐性化する事も知られています。耐性菌の中には一つの抗菌性薬剤だけでなく複数の抗菌性薬剤に抵抗性を持つ、いわゆる多剤耐性菌というものも存在します。有名なものではMRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)や、VRE(バンコマイシン耐性腸球菌)等の多剤耐性菌が出現しています。これらの多剤耐性菌に対する治療は非常に困難となり、世界中で大きな問題となっています。
抗菌性薬剤を使い続けるといつかは必ずその薬剤に対して抵抗性を持った耐性菌が出現しますが、その出現頻度には抗菌性薬剤の使用頻度や量が大きく関わっており、不適切な投与量や投与期間による治療により耐性菌が出現しやすくなります。
耐性菌の出現頻度を最小限に抑える為には、対象となる病原菌に対して、どの抗菌性薬剤が良く効くのかを確認する試験(感受性試験)を行い適切な薬剤を選ぶ事、かつ、適切な量と期間を決定して使用する事が重要になります。
動物医療の分野においても耐性菌の出現は大きな問題の一つです。耐性菌に感染した動物の治療が困難である事も一つの理由ですが、動物から人に感染し得るサルモネラやカンピロバクター等の食中毒菌が耐性化する事で、抗菌性薬剤による、これらの病原菌に感染した人の治療が困難になる恐れもあるからです。
その為抗菌性薬剤の適切な使用はもちろんですが、抗菌性薬剤の使用頻度や使用量を減らす為に、日頃からワクチンの接種によって免疫を強化する事や、消毒剤の使用等によって飼育環境の衛生状態を向上させる事、ストレスを減らし健全な飼育をする事によって動物自身に抵抗力を付与する事等により、動物を病原菌に感染させない事も重要になってきます。
我が国では、牛、豚、鶏といった畜産動物における耐性菌の出現状況を把握し、抗菌性物質使用のリスク分析を行う為、平成11年度より農林水産省の動物医薬品検査所と全国の家畜保健衛生所が協力して、サルモネラ、カンピロバクター等の4 菌種について菌の分離と分離した菌の薬剤耐性状況の調査を行っています。
関連法規
各法令の条文については「法令データ提供システム/総務省行政管理局」を参照下さい。
下記に人と動物と動物用医薬品に関連する主な法規をまとめました。
1.動物用医薬品等の薬事に関する法律・政令・省令等
- 医薬品医療機器等法(昭和35年法律第145号)
- 医薬品医療機器等法施行令
- 医薬品医療機器等法関連手数料令
- 薬事・食品衛生審議会令
- 動物用医薬品等取締規則
- 動物用医薬品等手数料規則
- 動物用医薬品の製造管理及び品質管理に関する省令
- 動物用医療機器及び動物用体外診断用医薬品の製造管理及び品質管理に関する省令
- 動物用医療機器及び動物用体外診断用医薬品の製造管理及び品質管理に係る業務を行う体制を定める省令
- 動物用医薬品の安全性に関する非臨床試験の実施の基準に関する省令
- 動物用医薬品の臨床試験の実施に関する省令
- 動物用医薬品、動物用医薬部外品及び動物用再生医療等製品の品質管理の基準に関する省令
- 動物用医薬品、動物用医薬部外品、動物用医療機器及び動物用再生医療等製品の製造販売後安全管理の基準に関する省令
- 動物用医療機器の安全性に関する非臨床試験の実施の基準に関する省令
- 動物用医療機器の臨床試験の実施の基準に関する省令
- 動物用再生医薬品等製品の安全性に関する非臨床試験の実施の基準に関する省令
- 動物用再生医療等製品の臨床試験の実施の基準に関する省令
- 動物用医薬品の製造販売後の調査及び試験の実施の基準に関する省令
- 動物用医療機器の製造販売後の調査及び試験の実施の基準に関する省令
- 動物用再生医療等製品の製造販売後の調査及び試験の実施の基準に関する省令
- 動物用医薬品製造所等構造設備規則
- 動物用生物学的製剤の取扱いに関する省令
- 動物用医薬品の使用の規制に関する省令
- 医薬品医療機器等法に基づく医薬品の使用禁止及び再生医療等製品の使用禁止に関する規定の適用を受けない場合を定める省令
- 動物用医薬品等取締事務の取扱いについての等の告示・通達
2.毒物・劇物、麻薬等に関するもの
- 毒物及び劇物取締法(昭和25年法律第303号)
- 麻薬及び向精神薬取締法(昭和28年法律第14号)
3.食品、飼料の安全に関するもの
- 食品衛生法(昭和22年法律第233号)
- 食品衛生法施行令
- 食品衛生法施行規則
- 食品安全基本法(平成15年法律第48号)
- 飼料の安全性の確保及び品質の改善に関する法律(昭和28年法律第35号)
- 愛がん動物用飼料の安全性の確保に関する法律(平成20年法律第83号)
4.家畜衛生、公衆衛生に関するもの
- 家畜伝染病予防法(昭和26年法律第166号)
- 狂犬病予防法(昭和25年法律第247号)
- 感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(平成10法律第114号)
5.獣医師と獣医療に関するもの
- 獣医師法(昭和24年法律第186号)
- 獣医療法(平成4年法律第46号)
- 獣医療法施行令
- 獣医療法施行規則
6.家畜保健衛生所に関するもの
- 家畜保健衛生所法(昭和25年法律第12号)
7.畜水産物に関するもの
- と畜場法(昭和28年法律第114号)
- 食鳥処理事業の規制及び食鳥検査に関する法律(平成2年法律第70号)
- 持続的養殖生産確保法(平成11年法律第51号)
8.環境保全に関するもの
- 廃棄物の処理及び清掃に関する法律(昭和45年法律第137号)
- 水質汚濁防止法(昭和45年法律第138号)
9.その他
- 農業災害補償法(昭和22年法律第185号)
- 水質汚濁防止法(昭和45年法律第138号)