はじめに

  1. 薬事法第14条第9項の規定に基づき、承認された事項の一部を変更するときは、農林水産大臣の承認を受けなければならないとされている。ただし、当該変更が農林水産省令で定める軽微な変更であるときを除くとされ、動物用医薬品等取締規則第33条において承認事項の軽微な変更の範囲が以下のように定められている。

      *次の各号に定める変更以外のものとされている。
       一 当該品目の本質、特性、性能又は安全性に影響を与える製造方法等の変更
       二 規格及び検査方法に掲げる事項の削除又は規格の変更
       三 病原因子の不活化又は除去方法に関する変更
       四 用法若しくは用量又は効能若しくは効果に関する追加、変更又は削除
       五 前号に掲げる変更のほか、製品の品質、有効性又は安全性に影響を与えるおそれのあるもの

  2. 承認された事項の一部変更が軽微なとき、届出制により変更できる制度は、平成14年の薬事法及び採血及び供血あっせん業取締法の一部を改正する法律(平成14年法律第96号)により改正された薬事法(「改正薬事法」という。)により導入され、平成17年4月1日から施行されている。
    改正薬事法第2条第12項の規定により原薬たる医薬品は製造販売承認を 要しないものとされ、また、改正前の薬事法(「旧法」という。)に規定されている品目毎の製造業の許可等が廃止され、これに伴い、製造販売承認申請書に記載する事項として、製造所に関連する情報及びこれまで原薬の承認事項とされてきた原薬の性状、製造方法、規格及び検査方法、貯法、有効期間等の品質に関する事項について、新たに製剤の承認申請書に記載することとされた。
  3. 承認事項の一部変更の承認申請となるのか、軽微変更の届出となるのかは、その後の手続きにおいて極めて大きな差異となる。承認事項の一部変項申請か軽微変更の届出かの運用を誤ると、規制側においても審査に無駄な時間を要することとなり、業界側においても変更が可能となるまでの期間、変更の事務手続き等に重大な負担が出るなど、極めて不合理、非効率的な扱いになることから、その運用・解釈には、明確かつ詳細な判断事例が明らかにされることが求められている。
  4. 人体用医薬品等においては、承認申請書の製造方法欄の製造場所及び製造方法の記載にあたって、あらかじめ製造方法の変更時における承認事項一部変更承認申請の対象事項と改正薬事法第14条第10項に規定する承認事項の軽微変更に係る届出の対象事項として申請者自らが区別して設定する仕組みを採用するとともに、承認事項の一部変更の承認申請、軽微変更の届出については、通知や承認申請書記載要領・軽微変更等に関する説明会の開催等により判断基準が示されている。
    動物用医薬品等に関しては、社団法人日本動物用医薬品協会が発行している「動物用医薬品等製造販売指針」(農林水産省消費・安全局畜水産安全管理課監修)において若干の説明が行われているのみであり、極めて不十分な状況となっている。
  5. このため、農林水産省の平成21年度食の安全・消費者の信頼性確保対策事業(動物用医薬品対策事業)の動物用医薬品等規制緩和対策事業において、社団法人日本動物用医薬品協会に承認審査等規制緩和委員会(委員長:福所 秋雄日本獣医生命科学大学教授)を設置し、農林水産省の指導の下に軽微変更事例集の作成を試みたところである。
  6. 当該軽微変更事例集は、業界側において、これまで経験された軽微変更について、アンケート調査方式により回答頂き、項目別に整理・集計したものである。個々の判断においては、承認事項の一部変項に該当するか、軽微変更に該当するかの運用・解釈は審査当局において行われものであることから、具体的な申請・届出にあたっては審査当局に事前に相談することが肝要であるのは申すまでもない。
  7. 軽微変更届出制導入の趣旨が承認事項の一部変更の承認審査の迅速化にあることを勘案すると、本事例集が承認申請事務の効率化に少しでも役立てれば幸いである。

承認審査等規制緩和委員会
(日本獣医生命科学大学 教授)
委員長:福所 秋雄